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東京高等裁判所 昭和41年(う)2214号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

理由

控訴趣意第一点(法令適用の誤り等を主張する論旨)について

所論は、本件犯罪は、警察署長の許可を受けないで道路に露店(屋台の誤記と認める。所論中、以下同じ。)を出すことによつて、成立するところ、右許可は、一定期間継続して与えられるものであり、被告人は、昭和三三年ころから、同一の営業を継続して行なう意思のもとに、殆んど毎日、川崎市南町に露店を出ていたものであるが、原判示被告人の所為は、本来一罪であるものを、原判決が、これを併合罪として処断したのは、事実を誤認し、法令の適用を誤つたものであると主張する。按ずるに、道路交通法第一一九条第一項第一二号(第七七条第一項第三号)の罪は、露店等の営業そのものを違法として処断の対象とするものではなく、右営業をなすについてする道路の無許可使用を処罰の対象とするものであり、かつ、本来、右道路使用の許否は、使用せんとする一定の場所について、当該場所における道路交通の安全と円滑をはかる見地から、各場所ごとに、道路使用の方法または形態等を具体的に検討して決定されるべきもの(道路交通法第七七項第一条第三号が「場所」を移動しないことを要件とし、同法第七八条第一項、同法施行規則第一〇条第一項第三・五号、第二項別記様式第六が道路使用の場所又は区間((法第七七条第一項第三号の場合は「場所」と解する。))を許可申請書および許可証の必要記載事項としていること等参照)と解するのが相当であるから、たとえ、露店等の営業を継続して行なう意思をもつてしたとしても、いやしくも使用する場所が異る以上、それぞれ、別個の犯罪が成立し、それらの罪は併合罪の関係にあるものと解するのが相当である。

これを本件についてみるに、記録によれば、被告人は、所論の如く、昭和三三年ころから継続的に屋台営業をなしていたことは推認されるが、原判決挙示の証拠によつて認められる原判示事実によれば、被告人は、昭和三九年七月二一日には川崎市南町八三番地、同年一一月四日には同市同町八四番地、同年一二月三日には同市同町二〇の一八番地において、それぞれ、無許可で道路を使用したというのであるから、その使用した場所を異にし、なお、営業に供した屋台の大きさも異ることが認められるので、たとえ、所論の如く、屋台営業という営業意思は包括的なものであつたとしても、右の如く、行為の客体が異り、従つて、本来、具体的な場所についての犯意も異るわけであり、また、右の如く使用の形態も異にするので、これを所論の如く一罪と解することはできず、前段説示するところから、これを併合罪の関係あるものと解するのを相当とする。それ故、これと同旨に出た原判決には、所論のような事実誤認ないし法令適用の誤りは存しない。所論援用の大阪高裁判決(昭和三一年一〇月三〇日言渡、高裁刑事裁判特報三巻九二六頁)は、一定の場所に出店を開き、同一場所を継続して不法に使用した案件にかかり、本件とはその事業を異にする。論旨は理由がない。<後略>(三宅富士郎 石田一郎 金隆史)

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